この記事では、税理士の坂根が解説します。
ポイント
公認会計士と税理士は、次のように仕事内容が異なります。
- 公認会計士のメインの仕事=会計監査(上場企業等の決算書の監査)
- 税理士のメインの仕事=税務(主に中小企業等の法人税、法人地方税、消費税などの確定申告書作成・レビュー、税務相談など)
なじみが無いとあまり違いが無いように感じますが、実際は大きく異なります。
いまはスタディングなど数万円から通える予備校もあり、独学するのが馬鹿らしいです。税理士や会計士を目指すのであれば、こちらの記事もご覧ください。
>>税理士試験は通信講座で合格可能?おすすめの予備校(専門学校)を比較!
公認会計士と税理士の違いとは?
公認会計士と税理士は全くの別物です。
大きな違いとしては、公認会計士は大企業向けの会計監査がメイン業務であり、税理士は税金の専門家であるというところです。
それぞれの仕事内容について簡単にご紹介します。
<税理士と公認会計士の主な違い>
税理士 | 公認会計士 | |
メインの仕事 | 税務代理、税務相談 | 会計監査 |
主な顧客 | 中小企業・個人事業主、相続人 | 上場企業など大企業 |
試験の特徴 | 11科目のうち5科目で合格 | 短答式試験合格後、論文式試験に合格 |
何年以内にとらないといけないか | 期限なし | 短答式試験合格後、2年以内に論文式試験に合格 |
受験生のレベル | 玉石混交 | 税理士受験生と比べると一般的に学歴が高い人が多い |
受験生の主な年齢層 | 20歳~50歳 | 20歳前後(大学生) |
合格に要する一般的な年数 | 2年~8年(10年以上かかるケースも多い、2年で5科目合格はごく稀) | 1年~4年(受験期間が長引く場合は合格を諦める方が多い) |
公認会計士とは?
公認会計士とは、公認会計士法によって定められている「監査及び会計の専門家」です。
公認会計士法第1条に、次の定めがあります。
「公認会計士は、監査及び会計の専門家として、独立した立場において、財務書類その他の財務に関する情報の信頼性を確保することにより、会社等の公正な事業活動、投資者及び債権者の保護等を図り、もつて国民経済の健全な発展に寄与することを使命とする。」
上場企業や負債200億円以上、資本金5億円以上といった大きな会社は、監査法人による監査を受けなければなりません。
「決算書」は会社が自主的に作るものであり、その中身までは公表されません。そして、その全容は経営者や経理部など、通常は会社内部の人しか知ることができないのです。
決算書の内容が正しいかどうかわからなければ、株主などの第三者が出資して良いかどうかなど判断できませんので、監査法人による監査を受けることで、決算書等の信頼性を高めています。
この監査法人で監査を行うのが公認会計士のメイン業務です。
税理士とは?
税理士とは、税理士法によって定められている「税務に関する専門家」です。
税理士法第1条に、次の定めがあります。
「税理士は、税務に関する専門家として、独立した公正な立場において、申告納税制度の理念にそつて、納税義務者の信頼にこたえ、租税に関する法令に規定された納税義務の適正な実現を図ることを使命とする。」
公認会計士は税法の専門家ではない
公認会計士は税法の専門家ではありません。
公認会計士試験では租税法という科目があり、「法人税法」「消費税法」「所得税法」について学びます。
ただ、そこまで深い内容までは学ばず、また、監査法人に入れば税金計算や未払法人税等の整合性などのレビューは税理士が担当していますので、公認会計士で税法について詳しい方は多くありません。
また、税務相談は、たとえ無償であっても税理士でなければ行ってはいけません(懲役や罰金などの罰則があります)。
そのため、税理士登録していない公認会計士は税務相談できません。
税理士は会計に関する専門家ではない
税理士は「税務に関する専門家」であって、会計に関する専門家ではありません。
ただ、現実問題としては日本の会社の99%が中小企業であり、監査を受ける必要が無い会社です。
そのため、多くの会社では会計に関してそこまで深く考えていないケースが多いです(もちろん、最低限のルールは守る必要がありますが、厳密に会計基準に則っていなくても監査を受けないため、咎める人がいない)。
中小企業では法人税などの計算をきちんとできることの方が大切ですので、税理士のお客さんのメイン層である中小企業においては深い会計知識はあまり重要視されていません。
深い会計知識が必要な会社は会計監査を受けるところ(つまり会計士が関与している)ですので、レベルが高い会計知識が求められる場合は会計士に相談、ということになります。
【難易度】税理士試験より公認会計士試験の方が難しい?
一般的には公認会計士試験の方が難易度が高いと言われていますが、どちらが簡単か、で選ぶと後悔します。
実感として、公認会計士試験の方が、受験者のレベルは高い印象があります。ただし、公認会計士試験は、1年や2年など、比較的短期で合格している人も多い試験です。一方で、税理士試験は最短で2年、早くて3年4年かかる試験です。
もちろん、税理士試験と公認会計士試験を両方受験したことがある人がほとんどいませんし、試験範囲も違うため単純比較はできず、正直どちらが難しいかはわかりません。
一般論としては、1年2年で合格するなら税理士試験の方がむずかしく、3年以上の長期間かけて合格するなら税理士試験の方が簡単です。
公認会計士試験と税理士試験の特徴
公認会計士試験では、「短答式試験」、「論文式試験」の2つがあります。
短答式試験は4科目、論文式試験は6科目を受験します。
短答式試験は年に2回の受験機会があり、短答式試験を突破すれば論文式試験の受験が可能です。
- 短答式試験の4科目:財務会計論、管理会計論、監査論、企業法
- 論文式試験の6科目:財務会計論、管理会計論、監査論、企業法、租税法、選択科目(経営学、経済学、民法、統計学)
短答式試験の合格後の有効期限は2年間です。論文式試験も、合格後2年間は科目合格が有効です。
このように、公認会計士試験は期限がありますので、学生の受験者がほとんどです。
一方で、税理士試験は社会人の受験が多いです。
税理士試験では、11科目あるうち、5科目に合格する必要があります。
ただし、税理士試験は1回とった科目は死ぬまで有効です。つまり、2年で5科目とっても構いませんし、50年かけて5科目とっても大丈夫です。
また、日商簿記1級などの受験資格が必要なため、必然的に受験者の年齢は高くなります。
なお、税理士試験は年に1回しか行われず、1度に受験する科目は通常1科目から多くても3科目です。
そのため、5年10年かけて受験する人も多いので、やはり年齢層は高い傾向にあります。
公認会計士試験と税理士試験、どちらを受験すべき?
試験の難易度で受験する試験を決めるのはおすすめしません。
公認会計士になりたいなら公認会計士試験を、税理士になりたいなら税理士試験を受験しましょう。
なお、公認会計士試験は合格すれば税理士登録をすることは可能です。ただ、公認会計士試験は税理士試験の上位互換というわけではありません。仕事内容がまったく別物です。
そのため、公認会計士として働きたいなら公認会計士試験を受験し、税理士として働きたいなら税理士試験を受験しましょう。
公認会計士試験や税理士試験は独学で合格可能?
公認会計士試験や税理士試験は独学での合格は大変厳しいです。
まず、独学用にまともなテキストが市販されていませんし、誰からも教わらずに勉強するのは効率が悪いです。
また、長期間に及ぶ試験ですのでモチベーションが続きません。 そのため、予備校を活用することをお勧めします。
いまはスタディングなど数万円で通える予備校もあり、独学するのが馬鹿らしいです。
以下の記事で、予備校の比較を行っていますので、これから受験を考えている方はご覧ください。