酒税法の受験はおすすめしません。酒税法の試験は廃止の声もあがったことがあるほど仕事に役立つものでなく、また、合格が難しい試験です。消費税法や相続税法を受験しましょう。
この記事では、21歳5科目合格した税理士の坂根が酒税法について解説します。
関連記事:【税理士試験】おすすめの科目選択について税理士が解説
税理士試験の酒税法はどんな試験?
税理士試験には11科目あり、そのうちの1つとして「酒税法」の科目があります。
そして、税理士試験を受験するのであれば、「合格に必要な勉強時間が少ない」という理由で、誰しもが酒税法の受験を考えたことがあるはず・・・ でも、やめておいた方が良いでしょう。
酒税はお酒の製造者等が支払う税金
酒税はお酒にかかる税金であり、お酒の製造者等が支払う税金です。
一般消費者やお酒を販売しているコンビニ、飲食店が納めているわけではありません。
酒税がどういった人に課される税金かは、酒税法第6条に規定があります。
- 酒類の製造者は、その製造場から移出した酒類につき、酒税を納める義務がある。
- 酒類を保税地域から引き取る者(酒類引取者)は、その引き取る酒類につき、酒税を納める義務がある。
つまり、酒税は酒造メーカーなど、主にお酒を造っている会社に課される税金です。
この酒税について、税理士試験の酒税法で学ぶことになります。
酒税法の出題範囲は?
酒税法の出題範囲は国税庁ホームページに次の通り公表されています。
「当該科目に係る法令に関する事項のほか、租税特別措置法、国税通則法など当該科目に関連する他の法令に定める関係事項を含む。」
つまり、次の内容が出題範囲に含まれており、勉強しなければならない範囲は多いです。
- 酒税法
- 酒税法施行令
- 酒税法施行規則
- 租税特別措置法
- 国税通則法 など
ただし、酒税法は他の税法科目と比べると圧倒的にボリュームが少ないです。
単純比較はできませんが、法人税法の本法は163条までありますが、酒税法の本法は59条までしかありません。
今年もそうだったけど、酒税法の理論問題は、立法趣旨を問われたり、各規定の横のつながりや事例での取り扱いを作文で書かされたり、「理論問題ってこうあるべきでは」的な問題が多い気がする
— 税理士@入野拓実 (@irinotax) August 21, 2019
試験範囲狭いから作ってる人も必死なんだと思うけどw
上記のように、試験を作るのに困る試験委員がいると言われるほど、出題範囲が狭いことがわかります。
関連記事:税理士試験の法人税法の難易度は?3年で5科目合格した税理士が解説
酒税法の合格率は約12%、合格者数は60名ほど
図:国税庁 令和元年度(第69回)税理士試験結果表(科目別)
酒税法は、下から6つ目にあり、令和元年度の合格率が12.4%、平成30年度合格率が12.8%です。
合格率は12%ですが、合格者数を見ると61人しかいませんので、合格が難しい試験です。
酒税法の過去の合格率推移
酒税法の合格率 | |
---|---|
70回 (2020)令和2年度 | 13.9% |
69回(2019)令和元年度 | 12.4% |
68回(2018)平成30年度 | 12.8% |
67回(2017)平成29年度 | 12.2% |
66回(2016)平成28年度 | 12.6% |
65回(2015)平成27年度 | 11.9% |
64回(2014)平成26年度 | 13.0% |
63回(2013)平成25年度 | 11.8% |
62回(2012)平成24年度 | 12.4% |
61回(2011)平成23年度 | 12.3% |
60回(2010)平成22年度 | 12.3% |
59回(2009)平成21年度 | 10.4% |
酒税法の合格率はあまりぶれず、だいたい12%ぐらいで推移しています。
酒税法の難易度は「中」
酒税法の難易度は、税理士試験のなかでは中レベルです。
酒税法は理論30点、計算70点で100点満点の試験となっています。
表向きは60点で合格ですが、これは「6割とればいいなら楽勝」と言うわけではありません。
酒税法の合格率は12%台程度しかなく、合格者数で言えば年間60名ほどしかいません。
実質的に周りの受験生との相対評価の試験ですので、基本的にはとれるところを全部とらないと合格できず、実質100点満点を目指す試験となっています。
わたしは酒税法の受験経験はありませんが、酒税法を受験している友人を見ると、やはり大変だと感じていたようです。
以下の記事で、税理士試験に一発合格するための秘訣をご紹介していますので、こちらの記事もぜひご覧ください。
酒税法の受験者レベルは?
酒税法の受験者レベルは、税理士試験のなかでは中程度です。
酒税法を受験するのは簿記論、財務諸表論の合格は基本的に済んでいる方ばかりです。
受験最後の1科目と考えている方も多く、法人税法や相続税法などボリュームが大きい科目を合格している受験者もいます。
ただし、試験範囲が狭いからという理由で半端な気持ちで受験する人もいます。
そのため、酒税法の受験者レベルは税法科目のなかでは中程度です。
関連記事:【税理士試験】相続税法の勉強時間、勉強方法を1発合格税理士が解説
酒税法の勉強時間の目安は400~600時間
酒税法の合格に必要な勉強時間は、400~600時間程度見ておきましょう。
酒税法の合格に必要な勉強時間の目安は、大原は170時間、TACは150時間と公表しています。
ただ、これは理論暗記の時間が含まれていませんので、最低でも2倍の340時間は見ておきましょう。
また、酒税法の試験範囲は狭いですが、1問もミスが許されません。そのため、知識をより強固なものにするために、400時間~600時間程度必要と考えておくと良いでしょう。
注意点として、酒税法の試験範囲が狭いため、どれだけ勉強しても他の受験生となかなか差がつかないことが挙げられます。
600時間勉強しようが、1,000時間勉強しようが2,000時間勉強しようが、ほとんど差がつきません。無論、長時間勉強している人の方がミスはしにくいため合格しやすいと言えますが、長時間勉強したからといって報われるとは限らない試験なので注意が必要です。
以下の記事で、他の科目の合格に必要な勉強時間など公開しています。税理士試験の受験をしている方はご覧ください。
関連記事:税理士試験に21歳で短期5科目合格した勉強方法や勉強時間を大公開
酒税法の受験をお勧めしない3つの理由
酒税法の受験をお勧めしない理由は主に次の3つです。
ポイント
- 実務で使わない
- 受験者数が少ない
- 出題範囲が狭い
実務で使わない
酒税法の受験で培った知識は、実務(仕事)でほとんどの方が使いません。
先ほど説明したように、酒税が関係してくるのは基本的に酒造メーカーです。
そのため、お酒を製造しているお客さんがいない限り仕事では使いません。
酒税法の合格者はたった61人とわ(><)(><)
— 税金マニア5 (@nRmNVsxh4cWrFtL) December 17, 2019
1番簡単な受験勉強だったが
合格するのは1番難しかった
人生遠回りをした
科目の選択制は、不幸をよぶので
簿記、所得、法人、相続、消費の5科目の強制にしたらいいと思うがね
酒税、住民税、事業税、固定資産税は、すぐに試験廃止したほーがいい
合格している人でさえ、廃止した方がいいのでは?というほどです。
清酒の製造免許を持っている会社が日本に1,500社程度(参考:国税庁 清酒製造業の概況)ですので、税理士の数を考えると98%以上の税理士が携わった経験が無いかと思われます。
実際に、わたしも携わった経験はありませんし、仮に仕事の話がきたら他の詳しい税理士をご紹介することになるでしょう。
また、酒造メーカーは何十年、何百年と続いている会社ですから、基本的に社内にノウハウがたまっています。そのため、日常的な酒税の話しは自社内完結するケースが多いと思います(案件として扱っている税理士を見たことはありますが、それはやはり、酒税法を読まないとできない仕事なので、法令解釈などの話しになれば税理士の出番はあるでしょう)。
「俺、酒造メーカーに勤めるんだ!」そういう方なら良いですが、それ以外の方はあえて受験する必要は無いでしょう。
受験者数が少ない
酒税法は受験者数が少なすぎるため、受験はおすすめしません。
税理士試験の科目選定は、受験者数が多い科目を選択した方がいいと思う。
— 福田哲也・税理士@仙台 (@fukuda_jp_net) March 18, 2020
自分は法人税法に合格後ちょっと楽をしようとミニ税法の酒税法を選択。
しかしどれだけ勉強しても実力には差が付かず、本試験はワンミスで努力は水の泡。何度Aを見たことか、、
努力が反映されるのは受験者数が多い科目。
69回税理士試験の酒税法の受験者数は492人しかいません。この中で合格できたのがたったの61人です。
受験者数でいえば、消費税法の6.6%しかいません。
どの税法科目も合格率に大差はありませんが、税理士試験は競争試験です。
合格者数を考えると、同じクラスで学んでいる人の中でトップをとれるかどうかで合格できるかどうか考えて良いかもしれません。
まじめに勉強するのであれば、受験者数が多い消費税法を選んだ方が合格できる可能性は高いでしょう。
言い方は悪いですが、受験者数が増えれば、それだけレベルの低い受験者も混じるため合格できる確率は上がります。
関連記事:【税理士試験】消費税法の難易度や勉強時間は?半年1発合格税理士が解説
出題範囲が狭い
酒税法は試験の出題範囲が狭いです。
そのため、大原やTACなど予備校での学習時間が短く設定されています。ただ、出題範囲が狭いということは1点も落とせないということです。
それにもかかわらず、「あまり勉強しなくていいんだ!」と勘違いして受験すると泥沼にはまります。
酒税法は独学で合格可能?
酒税法は独学での合格はできるかもしれません。ただ、1つでもミスしたらまた来年受験、という恐ろしい試験です。
午後からの財務諸表論は幾分持ち直し焦らずに回答できたと思う。酒税法は後から「満点を狙う科目だ」と聞いて諦めた。独学だったのでそんな事知らなかった。てっきり6割が合格点だと思っていた。試験終了後は押し寄せる後悔の塊と戦っていた。一体これ以上何をどうしたら正解を導けるようになるのか…
— マチ輝 (@machiteru1977) December 7, 2012
誰からも教わらず、闇雲に勉強するのは効率が良くないため、予備校を活用することをお勧めします。
以下の記事で、大原など税理士試験の予備校を比較していますのでご覧ください。
オススメの科目選択は?
酒税法より消費税法を受験した方が良いでしょう。
仕事で必須ですし、受験のボリュームもたいして多くありません。
以下の記事で、わたしが実際に選んだ科目などご紹介していますので参考にしてみてください。
関連記事:【税理士試験】おすすめの科目選択について税理士が解説
税理士試験に落ちないために知っておくべきこと
「税理士試験の合格が21歳なんて早い!羨ましい!」そう思う方もいるでしょう。
下記のnoteは、2年で5科目合格を目指したものの、残念ながら法人税法に不合格になった経験(=3年で5科目合格となった経験)から、税理士試験に落ちないために知っておくべきことを本音で語っています。
本音を言えば無料で公開してもよいのですが、 専門学校に対する批判なども含んでおり、あまり公にしたくない内容と なっています。
そのため、税理士試験に合格したいと本気で思っている方限定で有料公開することとしました。
本気で一発合格を目指す方だけ限定です。
1年に1回しかない税理士試験、本気で合格したい方はぜひ今すぐご覧ください。