受験ボリュームは少ないですが、簡単ではありません。受験生が少なすぎるため、激しい争いになります。消費税法や相続税法を勉強することをおすすめします。
この記事では、3年5科目合格した税理士の坂根が税理士試験の住民税について解説します。
ポイント
関連記事:高卒でも21歳5科目合格できた税理士試験の完全マニュアル
税理士試験の住民税はどんな試験?
税理士試験には11科目あり、そのうちの1つとして「住民税」の科目があります。
主な特徴は次の通りです。
ポイント
- 住民税は市町村、都道府県に納める税金
- 住民税の出題範囲は地方税法などの一部
- 合格率は8~19%と毎年ブレがある
- 合格者数は毎年数十名しかいないため、1つでもミスしたら落ちる試験となっている
住民税は市町村、都道府県に納める税金
住民税は市町村、都道府県に納める税金であり、法人税や所得税と同様に、基本的には儲けに対して課税される税金です。
個人には個人住民税が、法人(会社)には法人住民税が課税されます。
住民税は市町村や都道府県に納める「地方税」と呼ばれ、法人税や所得税、相続税や消費税といった国に納める「国税」と異なります。
そのため、税理士試験では「地方税法」について学習します。ちなみに、「住民税法」という法律はありません。
正式名称は「道府県民税」「市町村民税」であり、これらを一括りに「住民税」と呼んでいます。そして、住民税は「地方税法」の一種です。
地方税法には事業税や地方消費税、不動産取得税やたばこ税、ゴルフ場利用税や軽油引取税など、数多くの税金についての決まりがあります。
住民税は、この地方税法の中に規定があります。
税理士試験では「地方税法」のうち「住民税」に限った学習を行います。そのため、試験範囲のボリュームは少なめです。
住民税の出題範囲は地方税法などの一部
住民税の出題範囲は国税庁ホームページに次の通り公表されています。
「当該科目に係る地方税法、同施行令、施行規則に関する事項のほか、地方税法総則に定める関係事項及び当該科目に関連する他の法令に定める関係事項を含む。」
- 地方税法
- 地方税法施行令
- 地方税法施行規則
- 地方税法総則に定める関係事項 など
上記が出題範囲に含まれており、「ミニ税法」といえど、勉強する範囲は狭くはありません。
ただし、「住民税」の試験範囲は「地方税法」のうち「住民税」部分だけですから、他の税法科目と比べるとボリュームが少ないです。
住民税の合格率は8~19%、毎年ブレがある
図:国税庁 令和元年度(第69回)税理士試験結果表(科目別)
住民税は下から4つ目にあり、令和元年度の合格率が19.0%、平成30年度合格率が13.5%です。
住民税の過去の合格率推移
住民税の合格率 | |
---|---|
70回 (2020)令和2年度 | 18.1% |
69回(2019)令和元年度 | 19.0% |
68回(2018)平成30年度 | 13.5% |
67回(2017)平成29年度 | 14.3% |
66回(2016)平成28年度 | 11.7% |
65回(2015)平成27年度 | 9.6% |
64回(2014)平成26年度 | 8.7% |
63回(2013)平成25年度 | 12.2% |
62回(2012)平成24年度 | 16.5% |
61回(2011)平成23年度 | 16.6% |
60回(2010)平成22年度 | 16.2% |
59回(2009)平成21年度 | 18.2% |
住民税は受験者数が少ないのもあり、合格率のブレが激しいです。
平成21年度は18.2%、その後合格率が下がり、平成26年度、平成27年度は10%を下回っています。直近2回の試験では合格率が19%、18.1%と高い水準に位置しています。
合格者数で言うと全国で毎年数十人しかいないため、通学講座で言えば、クラスの中で1、2を争うレベルでないと合格できないということです。
住民税の難易度は中レベル
住民税の難易度は、税理士試験の中では中レベルです。
住民税は理論50点、計算50点で100点満点の試験となっています。
表向きは60点で合格ですが、実際は、テキストに載っているところは1つもミスが許されないレベルでないと合格できません。
合格率は10%程度しかなく、合格者数は毎年数十人です。点数をとれるところは全部とらないと合格できません。消費税法や相続税法を受験した方が、まだミスが許されます。
関連記事:【税理士試験】おすすめの科目選択を3年5科目税理士が解説
住民税の受験者層は中レベル
住民税の受験者層は、税理士試験の中では中程度のレベルです。
他の科目に1発で合格していくような優秀な人はあまり受験しない科目だからです。ただし、簿記論、財務諸表論の合格は基本的に済んでいる方が多いため、なめてかかるといつまでたっても合格できません。
住民税を受験最後の1科目と考えている方も多く、法人税法や所得税法などボリュームが大きい科目を合格している受験者も中にはいます。
ただし、試験範囲が狭く、他の受験生とあまり差がつきませんので、中途半端な気持ちで受験すると何年たっても合格できません。
住民税の受験者レベルはめちゃくちゃ高いわけではありませんが、決して低くもありませんので、しっかりと勉強しましょう。
関連記事:税理士試験の法人税法の難易度は?3年で5科目合格した税理士が解説
住民税の合格に必要な勉強時間の目安は400~600時間
住民税の合格に必要な勉強時間は、400~600時間ほど見ておきましょう。
住民税の合格に必要な勉強時間の目安は、大原は190時間、TACは200時間と公表しています。
ただし、予備校が公表する勉強時間には理論暗記の時間が含まれていません。そのため、最低でも2倍の400時間は見ておきましょう。
また、住民税の試験範囲は狭いですが、ケアレスミスが許されませんので、知識をより強固なものにするため、600時間程度の勉強時間は必要と考えておいた方が良いでしょう。
以下の記事で、税理士試験の他の科目の合格に必要な勉強時間など公開していますので、1日何時間勉強すれば良いか目標をたてましょう。
関連記事:税理士試験に21歳で短期5科目合格した勉強方法や勉強時間を大公開
住民税の受験をお勧めしない3つの理由
住民税の受験をお勧めしない理由は大きく次の3つです。
ポイント
- 実務での重要度が低い
- 受験者数が少ない
- 出題範囲が狭いため他の受験生と差がつかない
実務での重要度が低い
住民税は実務での重要度が他の税理士試験科目と比べて低いです。
住民税は、確かに仕事をするうえでは必要な知識です。
ただ、住民税は、基本的には法人税や所得税で計算した儲けに連動して計算される税金です。
そのため、法人税や所得税の知識を強固にすることの方がよほど重要です。
法人税や所得税ができれば概ねOKである一方、万が一、法人税や所得税の計算を間違えたら、住民税も連動して間違えてしまうからです。
確かに住民税特有の論点はありますが、それは仕事をしていくうえで学んでいけばよいでしょう。
住民税を税理士試験で何百時間も勉強するよりは、消費税法や相続税法を勉強した方がよほど役に立ちます。
仕事であまり使わない知識のために何百時間も使うのはもったいないです。
関連記事:【税理士試験】消費税法の難易度や勉強時間は?半年1発合格税理士が解説
受験者数が少ない
69回税理士試験の住民税の受験者数は410人しかいません。
事業税の次に受験生が少ないワースト2の科目です。この410人の受験者の中、合格できるのはたったの78人です。
受験生の人数が410人で合格者が78人ということは、もし、いま通っている学校のメンバーの中で、1番2番ぐらいをとれると確信できるレベルでなければ、不合格になる確率が高いということです。
税理士試験は不合格になる人が9割いる試験だということを忘れてはいけません。
税理士試験合格者……
— 🐻🍬空色まつり💿天王星人 ch/Uranian ch (@BiuHsDy8MO4xu4V) December 18, 2020
酒税法62人
住民税69人
事業税44人
は低すぎww
日本の試験で一番合格人数少ないんじゃね?税理士試験ww
こんなん時間が有ったら満点取れるような人しか受からないでしょww
カフェにて税理士試験住民税を勉強するレアキャラがいた
— いぶき (@iveky) November 9, 2019
住民税の受験=レアキャラです、しっかり勉強しないと合格できません。
出題範囲が狭いため他の受験生と差がつかない
住民税は試験の出題範囲が狭く、他の受験生と差がつきません。
住民税の出題範囲は狭いため、大原やTACなど、予備校で合格に必要な勉強時間の目安は短く設定されています。
ただ、出題範囲が狭いということは、満遍なくできるのは当たり前、それに加えて1つもミスできないということです。
それにもかかわらず、「あまり勉強しなくていいんだ!」と勘違いして受験すると、何年も受験することになる泥沼にはまります。
税理士試験科目ごとの難易度など所感4
— 山田典正 & AMPERSAND & (@nyamadampersand) December 18, 2018
⑦住民税 ボリュームが最小、同じ問題ばかり、基本簡単だが基本満点、ミスは許されない
⑧事業税 ボリューム小だが中々苦戦している人多し、あまり情報なし
⑨固定資産税 ボリューム小、周りは皆かなり苦戦している、記憶重視#税理士 #税理士試験
税理士試験住民税の計算問題は控除額の速算表とか問題文にもどこにもないから全暗記必須とか腐ってる
—(@ruttu1986jp) February 9, 2021
住民税は、テキストに書いてある内容はほとんどの人が完璧に仕上げてくるうえに、とれる問題を1つでもミスしたら不合格になる可能性が高いです。そのため、受験するのはお勧めしません。
法人税法や相続税法、消費税法など他のボリュームある税理士試験科目であれば、すべてを完璧に仕上げられる受験生ばかりではありません。そのため、1つや2つぐらいのミスであれば許容範囲です。
しかし、住民税では1つでもミスしたら命取りになりますので、受験する科目としてはおすすめしません。
関連記事:【税理士試験】相続税法の勉強時間、勉強方法を1発合格税理士が解説
住民税は独学で合格可能?
住民税は独学での合格はできるかもしれません。ただし、独学はおすすめしません。
住民税の試験範囲は広くありませんが、1つでもミスしたらまた来年受験、という恐ろしい試験です。
税法は毎年改正がありますが、市販のテキストでは差し替えが追い付きません。また、市販のテキストは通学講座で使用しているものよりグレードを落としてあるケースが多いです。模擬試験も当然ありません。
もし、予備校の模擬試験で出た問題と似た問題が出題された場合、他の受験生はできるのに自分だけ知らなかったため不合格になるという確率が上がります。そのため、最低でも模擬試験だけは予備校で受験しておきましょう。
独学での勉強は効率が良くありませんし、誤った勉強法を続けて1年間を無駄に過ごしてしまうのは非常にもったいないです。
最近ではテキストに講義に問題集、模擬試験までついて数万円の格安通信講座「スタディング」もあります。
大原やTACの6分の1の価格で学べますので、どうしてもお金が無いということであればこういった予備校を活用することをお勧めします。
以下の記事では各予備校を比較していますので、どこに通うか悩んでいる方は、参考にしてみてください。
オススメの科目選択は?
税理士試験の受験では、「住民税」より「消費税法」や「相続税法」を受験することをお勧めします。
これらの科目は仕事で必須ですが、「法人税法」や「所得税法」と比べると受験のボリュームもたいして多くありません。
住民税は勉強しても仕事で役立てられる場面が少ないので、貴重な勉強時間は「消費税法」や「相続税法」などに充てた方が良いでしょう。
以下の記事で、わたしが実際に選んだ科目などご紹介していますので参考にしてみてください。
関連記事:【税理士試験】おすすめの科目選択について税理士が解説
税理士試験に落ちないために知っておくべきこと
わたしは21歳で税理士試験に5科目合格しました。
「税理士試験の合格が21歳なんて早い!羨ましい!」そう思う方もいるでしょう。
このnoteは、2年で5科目合格を目指したものの、残念ながら法人税法に不合格になった経験(=3年で5科目合格となった経験)から、税理士試験に落ちないために知っておくべきことを本音で語っています。
本音を言えば無料で公開してもよいのですが、 専門学校に対する批判なども含んでおり、あまり公にしたくない内容と なっています。
そのため、税理士試験に合格したいと本気で思っている方限定で有料公開することとしました。
本気で一発合格を目指す方だけ限定です。
1年に1回しかない税理士試験、本気で合格したい方はぜひ今すぐご覧ください。
関連記事:高卒でも21歳5科目合格できた税理士試験の完全マニュアル